簿記一巡の流れ|取引から決算書ができるまで
簿記の勉強でつまずく理由の多くは、個々の処理ではなく「いま何のためにこれをやっているのか」が見えないことです。
ここでは、取引が起きてから決算書ができるまでの一連の流れを順に追います。全体の地図があると、細かい論点が地図のどこにあるか分かるようになります。
全体は6つの段階でできている
1年間の簿記の作業は、大きく次の順に進みます。
- 1. 取引が起きる(商品を売った、家賃を払った)
- 2. 仕訳する(借方と貸方に分けて記録する)
- 3. 総勘定元帳へ転記する(勘定ごとに集める)
- 4. 試算表を作る(転記が正しいか確かめる)
- 5. 決算整理をする(決算日時点の正しい姿に直す)
- 6. 損益計算書と貸借対照表を作る
① 取引 → ② 仕訳
簿記でいう取引は、日常語の取引とは少し違います。資産・負債・純資産・収益・費用のどれかが動いたときだけが取引です。契約を結んだだけ、注文を受けただけでは、まだ何も動いていないので仕訳しません。
逆に、火事で商品が焼けた、現金が盗まれたといった出来事は、会話では取引と呼びませんが、資産が減っているので簿記では取引です。
② 仕訳 → ③ 総勘定元帳
仕訳は起きた順に並んだ記録です。このままだと「現金はいまいくらあるのか」が分かりません。そこで勘定ごとに集め直します。これが転記で、集めた先が総勘定元帳です。
仕訳帳が日記なら、総勘定元帳は項目別のノートです。同じ情報を、時間順と項目別の2通りで持っておく、というのが簿記の基本の形です。
③ 総勘定元帳 → ④ 試算表
転記は手作業なので、書き漏らしや金額違いが起こります。それを見つけるために、各勘定を1枚に集めて借方合計と貸方合計が一致するかを確かめます。これが試算表です。
仕訳は必ず借方と貸方が同額なので、正しく転記されていれば合計も一致します。合わなければどこかで間違えている、という検算装置です。
④ 試算表 → ⑤ 決算整理
期中の記録は、そのままでは決算日の実態と合っていません。まだ売れ残っている商品、使った分だけ価値が減った備品、来年分まで払ってしまった保険料。こうしたズレを直すのが決算整理です。
3級で問われる決算整理は、売上原価の算定・貸倒引当金・減価償却・経過勘定などに決まっています。第3問(35点)の中心はここです。
⑤ 決算整理 → ⑥ 決算書
整理が終わったら、収益と費用を集めて損益計算書に、資産と負債と純資産を集めて貸借対照表にします。もうけがいくらだったかと、いま何をどれだけ持っているか、という2枚です。
最後に、収益と費用の勘定は次期に持ち越さず、その差額(当期純利益)を繰越利益剰余金へ振り替えて締めます。翌期はまた①から始まります。
地図を持っておくと迷わない
たとえば「なぜ決算で減価償却をするのか」と聞かれたとき、⑤の段階の話だと分かっていれば、期中の記録を実態に合わせる作業だと説明できます。個々の処理を覚えるより、どの段階の話かを掴むほうが応用が利きます。
簿記3級コーチのレッスンはこの順に並んでいます。いまどの段階を学んでいるかを意識しながら進めると、後半の決算がぐっと楽になります。
よくある質問
- 仕訳帳と総勘定元帳は両方作るのですか?
- はい。仕訳帳は起きた順、総勘定元帳は勘定ごとに集めたものです。同じ情報を2通りの並びで持つことで、記録の正しさを確かめられます。
- 試算表は毎月作るのですか?
- 実務では月次で作ることが多く、試験では決算前や月末の残高を問う形で出ます。目的は転記の検算なので、区切りのタイミングで作ります。
- 決算整理をしないとどうなりますか?
- 在庫や減価償却が反映されないまま利益が出てしまい、実態とかけ離れた決算書になります。整理はそのズレを埋める作業です。